それは、晴天の雨のように。
雲が在るから空の高さを知る事ができる。
今日もひっそりと暮れてゆく。


雲雀が啼いた。


■■


「要は巡り廻って立ち位置に戻るのさ、」
軒下から出てきた猫がそう云った。
「前は後ろで後ろは、さて何だと思う。」大きく伸びをしながら猫は問う。

さて、何か。

ぎしぎしと錆付いた思考の螺子を回してみても、ぐわんと音が一度したきりで
何かが燃えた匂いがしただけだった。
髭を震わせ猫は笑う。
「お前ははじめから解っていたのじゃないかい。
解っていたから此処へ来たのだろう。お前が此処へ来る事など最初から知っていたさ。
靴を脱いで隠れたって無駄だよ。
そぅれ、お前の周りは深く抉れた足の跡でいっぱいではないか。」

ぽたり、汗が落ちる。
総てを見渡すまでもなかった。
私の周囲は私の足跡で埋め尽くされ、
ぐるりと抉られた土の矛先は全て私を向いていたのだ。
両の手に持たれていた磨り減った革靴が、音も無く落ちた。

ひらりと塀の上へ飛び乗った猫は、足を組んで歌うように喋る。
「ああ、雲が流れているよ。今日は何と善い天気だ。」

真っ青な空。


みゃあ、と猫が啼いた。


■■


スコールのような天気雨は靴跡を消してゆく。

傘から覗く空がやけに遠い。

清まし顔の猫が踵を響かせ私の前を横切っていった。

音が止んだ世界に傘を棄て、ふいに振りかえる。


後ろには、

虹が出ていた。


ほぅ、と私は泣いた。



【2007/04/23 20:56】 | 詩: 「物語」 | トラックバック(0) | コメント(8) | page top↑
幸福論。
魚が空を飛んで
鳥が海を泳ぐんだ

そんな空想ばかり話す君

風は虹色で
雲は風になるんだ

天を仰いで笑う君

水は飴で
飴は・・・・ごはん!

真剣な顔で話す君
いつだって本気だからかなわない

そんなあべこべな世界で
じゃあ僕らはどうなる

「変わらないよ」
と また笑う

根拠などさっぱり解らないが
僕もつられて笑ってしまった

君は金管 僕は木管
部屋には音楽で満ちている

「ボクが女の子で
キミが優しい人間になるっていう世界も
面白いね」

いつだって一言多い君


雲は流れて 鳥はさえずり
僕の隣に いつも君

変わらない という幸福論
【2007/04/06 14:00】 | 詩: 「物語」 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
夢。
「やっと 逢えた」


ここにいたんだね

そう 

あのときのぼくだよ

また めぐりあうために

きみはうまれたんだ

もうしんぱいはいらないよ

ぼくはここへきたのだけら

きゅうに いなくなるなんて

びっくりするじゃないか

ひとりは さみしかっただろう

だからきみは



きみは ぼくを さがしていたんだ



これからはいっしょだよ






そして僕は


眠りから醒めた
【2007/04/03 00:15】 | 詩: 「物語」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
まっしぐら
自転車こいであの場所へ
「まっしぐら」っていう言葉は
僕のためにあるみたい

このスピード
きっと時の刻みよりも早くって
ちょっとだけ未来を走ってるよ

ごめんね
こんなに遅くなってしまって
でも もう少しなんだ

あの場所は変わっていないだろうか

今も太陽は昇っているだろうか


ブレーキは もういらない

【2007/03/23 19:59】 | 詩: 「物語」 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
山梔子(くちなし)
珍しくピクニックに行きたいだなんて云うから
僕は吃驚したんだ
だって君は外へ出るのを嫌うだろ
日焼けしたくないっていつも文句ばっかり
真っ白な君はとても美しいから
僕も大好きだけど
偶には二人で海にでも行きたかったんだ

珍しくピクニックに行きたいだなんて云うから
僕は嬉しかったんだ
だって君は僕の運転を嫌うだろ
スピードが鈍いっていつも怒ってばっかり
真っ赤なオープンカーで風を切るのは気持ちいいから
僕も大好きだけど
出来るだけ君と二人きりの時間を長く過ごしたかったんだ


違う笑顔の君
ピクニックに行きたいだなんてはしゃぐから
僕は 悲しくなったんだ
もうそんな季節なんだね

真っ白いカーテンを翻して
一陣の風
窓の向こうに一本の梔子(くちなし)の木
白い花を咲かせ馨っている


僕は 
あまりにも幸せでした


【2007/03/21 14:48】 | 詩: 「物語」 | トラックバック(0) | コメント(3) | page top↑
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